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ひだまりすずめ 中山寒稀のブログ fuyuci7.exblog.jp

ライター、CFP              ゆる~く健康、人生、終活を語る!


by 中山寒稀

書評『命が消えたらどこへゆくのか』

人間の永遠のテーマともいえる、「死」がテーマ。
神道の考え方をベースに、自分が死んだ後に行く世界や、祭祀(仏教でいうところの供養)をする意味をなど、死にまつわる疑問や不安、その上で、生きるということを教えてくれる書籍になっています。

本書の著者は、救命救急士であり神職というちょっと変わった肩書の持ち主。
生と死の狭間で闘う救命救急士と、精神世界を重視する神職は、一見、相反する職業のように思えます。しかし、著者曰く、その2つの仕事には共通点があるとのこと。それは「救い」。救命救急士として顕世(この世)の命を救い、神職として幽世(あの世)の「みたま」を救っているのです。

死んだら「自分」はどうなるのか? 
すべての人がいつか経験することにもかかわらず、この世にいる人は誰も経験していないことですからことですから、不安に感じるのは当然です。「その時」、一体、自分には何が起こるのでしょうか?

本書では、45歳の「瑛太」さんが事故により死を迎えるときから、霊界(死後の世界)に旅立つまでの物語を紹介しています。

自動車事故によって亡くなり、「みたま」になったばかりの瑛太さんは、まだ自分の死を理解していません。第三者のような視点から、死んだ自分、神葬祭(神道のお葬式)の様子や嘆き悲しむ家族の姿を見つめています。
少しずつ状況を把握しながらも、自分の死を受け入れられないジレンマや家族を悲しませている罪悪感、この世への未練など、さまざまな思いと向かい合っていくことになります。

やがて、家族の思いや自分の肉体が弔われていく過程を受け止めて、自分の死を受け入れ、納得し、霊界へと旅立っていきます。

驚くのは、人はあの世へ「行かなければいけない」わけでも、「強制的に行かされる」わけでもなく、自ら納得して行くということ。さらに、みたなは、お墓、霊璽(仏教でいうところの位牌)に宿って家を守り、産土神社にもとどまってその地域を守るそうです。つまり、亡くなった人は霊界に身近にもいて、私たちを守ってくださっていることになります。

あの世とこの世は、遠いようで近く、密接につながっているようです。曖昧になりがちなあの世の話が論理立てて語られているので、思いのほか納得感があるのではないでしょうか。

本書を読むと、「死」は終わりじゃないこと、人は役割をもって生まれてきているなど、死生観、人生観が変わります。本書で著者が語る言葉は、強く厳しく、それでいて優しく癒される書籍です。

鈴木哲司(著)/二見書房

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by fuyuci_nacayama4 | 2020-09-23 12:10 | 書評